○下関市手話言語条例

令和3年3月8日

条例第4号

手話は、意思や感情、物の名称等を、手指や体の動き、顔の表情等を使って表し、目で見て理解する言語である。

ろう者は、物事を考え、お互いの気持ちを理解するために必要な言語として、手話を大切に育みながら、日常生活又は社会生活を営んできた。

しかしながら、長い間、手話は言語として認められなかったことや、手話を使用することができる環境が十分に整っていなかったことなどから、ろう者は必要な情報の取得やその意思の伝達の際に、多くの不便や不安を感じながら生活してきた。

このような状況の中、平成18年に国際連合総会で採択された障害者の権利に関する条約や平成23年に改正された障害者基本法において、手話は言語として位置付けられたが、いまだ手話に対する理解が十分であるとは言えない状況にある。

そのため、広く市民等に対し手話の普及を図るとともに、聴覚障害者及びその家族が共に手話を習得する機会を確保することが重要である。

ここに、私たちは、手話は言語であるという認識に基づき、手話及びろう者に対する理解を広げ、相互に地域で支え合い、安心して暮らすことのできる下関市を目指し、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、手話が言語であるという認識に基づき、手話についての基本理念を定め、手話に関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより、全ての市民等が互いに支え合い、尊重し合いながら共生する地域社会の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) ろう者 聴覚に障害のある者のうち、手話を使用して日常生活又は社会生活を営む者をいう。

(2) 市民等 市の区域内(以下「市内」という。)に居住し、通勤し、又は通学する者をいう。

(3) 事業者 市内において営利又は非営利を問わず事業活動を行う個人又は法人その他の団体をいう。

(4) 手話関係者 手話通訳者その他の手話に関する活動を行う個人又は団体をいう。

(5) 学校等 市内に存する学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する学校、児童福祉法(昭和22年法律第164号)に規定する児童福祉施設(幼保連携型認定こども園を除く。)及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成18年法律第77号)に規定する認定こども園をいう。

(基本理念)

第3条 手話及びろう者に対する理解の促進、手話の普及並びに手話を使用しやすい環境の構築は、手話が言語であること及びろう者が手話により意思疎通を図る権利を有することを踏まえ、ろう者とろう者以外の者とが互いに人格及び個性を尊重することを基本として推進されなければならない。

(市の責務)

第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、手話を使用しやすい環境を整備するため、必要な施策を推進するものとする。

(市民等の役割)

第5条 市民等は、基本理念にのっとり、手話及びろう者に対する理解を深め、手話に関する市の施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の役割)

第6条 事業者は、基本理念にのっとり、ろう者が利用しやすいサービスを提供するとともに、ろう者が働きやすい環境を整備するよう努めるものとする。

(市の基本的施策等)

第7条 手話を使用しやすい環境を整備するための市の基本的な施策は、次のとおりとする。

(1) 手話及びろう者に対する理解の促進に関する施策

(2) 手話の普及及び啓発に関する施策

(3) 手話による情報の発信及び取得に関する施策

(4) 手話による意思疎通の支援に関する施策

(5) 手話通訳者及び手話奉仕員の養成及び確保に関する施策

(6) その他市長が必要と認める施策

2 市は、前項の施策の推進に当たり必要があると認めるときは、ろう者及び手話関係者の意見を反映させるよう努めるものとする。

(手話を学ぶ機会の確保)

第8条 市は、ろう者、手話関係者及び手話を使用することができる者と協力して、市民等が手話を学ぶ機会の確保に努めるものとする。

(学校等における手話の普及等)

第9条 市は、学校等における手話への理解及び手話の普及を図るため、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

2 学校等の設置者は、聴覚に障害のある乳幼児、児童、生徒又は学生(以下「ろう児等」という。)がいる場合は、手話に関する必要な支援を受けることができるよう努めるものとする。

(ろう児等及びその家族に対する支援)

第10条 市は、ろう児等及びその家族に対し、心身の成長の過程に応じた手話に関する必要な情報の提供及び手話を獲得するための必要な支援を行うよう努めるものとする。

(医療機関における環境の整備)

第11条 市は、医療機関において手話を使用しやすい環境を整備するため、手話通訳者を派遣する制度の周知その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(公共施設等における手話の啓発)

第12条 市は、公共施設、福祉施設その他これらに類する施設において、手話及びろう者に対する理解の促進及び手話の普及のための積極的な啓発に努めるものとする。

(災害時の対応)

第13条 市は、災害時において、ろう者に対し、情報の取得及び意思疎通の支援に必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(財政上の措置)

第14条 市は、手話に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(委任)

第15条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

この条例は、令和3年4月1日から施行する。

下関市手話言語条例

令和3年3月8日 条例第4号

(令和3年4月1日施行)