青島市派遣職員レポート


  
年月 記事タイトル
2012年5月 下関市と青島市友好の絆〜“下関・青島ゆかりの会”開催〜(「メッセ海外通信」掲載記事 青島派遣職員 三浦 万季)
2012年2月 青島人と日本人‐青島市に赴任して感じたこと(「メッセ海外通信」掲載記事 青島派遣職員 三浦 万季)
2011年11月 日本語学習者から私たち日本人が学ぶべきこと‐日本語弁論大会を通じて-(「メッセ海外通信」掲載記事 青島派遣職員 三浦 万季)
2011年8月 震災後の訪日中国人観光客誘致に向けて(「メッセ海外通信」掲載記事 青島派遣職員 澤淵 史恵)
2011年7月 中国‐第12次5カ年計画から(「メッセ海外通信」掲載記事 青島派遣職員 澤淵 史恵)
2011年1月 急速な交通インフラ整備の進む青島(「メッセ海外通信」掲載記事 青島派遣職員 澤淵 史恵)
2010年10月 下関市と青島市の友好交流の歴史を振り返って(「メッセ海外通信」掲載記事)青島派遣職員 澤淵 史恵)
2010年07月 山東省における環境政策について(「メッセ海外通信」掲載記事)青島派遣職員 澤淵 史恵)
2010年04月 中国住宅ブームの光と影(「メッセ海外通信」掲載記事)青島派遣職員 澤淵 史恵)
2010年1月 一人っ子政策施行から30年、少子高齢化のすすむ中国(「メッセ海外通信」掲載記事)青島派遣職員 澤淵 史恵)
2009年10月 下関市・青島市友好締結30周年を迎えて(「メッセ海外通信」掲載記事)青島派遣職員 澤淵 史恵)
2009年7月 内需拡大に人民元4兆元(「メッセ海外通信」掲載記事)青島派遣職員 白野 哲)
2009年4月 見直される中国の医療保障制度(「メッセ海外通信」掲載記事)青島派遣職員 白野 哲)
2008年12月 拡がるオンラインショッピング (「メッセ海外通信」掲載記事)青島派遣職員 白野 哲)
2008年9月 中国の就職事情について (「メッセ海外通信」掲載記事)青島派遣職員 白野 哲)
2008年7月 中国の旅行事情について (「メッセ海外通信」掲載記事)青島派遣職員 白野 哲)
2007年12月 オリンピックへ向けて (「メッセ海外通信」掲載記事)青島派遣職員 白野 哲)
2007年9月 青島市の交通事情について (「メッセ海外通信」掲載記事)青島派遣職員 白野 哲)
2007年6月 世界の友と語り合うために−青島国際ビール祭り (「メッセ海外通信」掲載記事)青島派遣職員 礒田 将史)
2007年1月 下関平家踊り保存会青島公演レポート(「メッセ海外通信」掲載記事)青島派遣職員 礒田 将史)
2006年10月 下関市小学生海外派遣研修レポート(「メッセ海外通信」掲載記事)青島派遣職員 礒田 将史)
2006年7月 おじいさんと鳥かご(「メッセ海外通信」掲載記事)青島派遣職員 礒田 将史)
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「拡がるオンラインショッピング」 2008年12月

≪世界一のネット人口≫
 中国インターネットネットワーク情報センター(CNNIC)が発表した「第22回中国インターネット発展状況統計報告」によると、2008年6月末時点で中国のインターネット人口は2.53億人に達し、米国のネット人口を抜いて初めて世界第一位となった。また、ネットユーザーのネット上での行為も現実の生活に近づいており、ネットショッピングやネットバンクなど実用的応用が普及してきている。データによると、中国のネットユーザーのネットショッピング利用率は25%、ユーザー数は6329万人に上り、うちネットショッピングが最も普及している上海では、利用率は45.2%に達している。すでに日本の楽天ストアやYahooショッピングに該当するネットショッピングモールが多数存在し、その賑わいは日本を凌駕しているのではないだろうか。ネット普及率こそ19.1%と、世界平均の21.1%をまだ下回ってはいるが、その消費者数からみると中国のネットショッピング市場は極めて大きな将来性を持っていることが伺える。

≪なぜネットショッピング?≫
 なぜネットショッピングがこれほど支持されるようになったのだろうか。ネット環境や輸送システムの充実などハード面での基盤が整ったことも挙げられるが、消費者を引き付ける一番の魅力はその安さにあると思われる。中国では依然として都市間の物価格差が激しく、同じ商品でも地域によってその価格は大きく異なる。すなわち地方の店から出品される商品は格安で手に入ることが多い。ネットショッピングは都市部で生活するネットユーザーにとって、実に魅力的な方法なのである。また、ネット上ではあらゆる物が取引されており、手に入らないものはないと言っても過言ではない。物流条件の整っていない地方に住むユーザーにとっては、まさに何でも揃っている理想のスーパーであり、購入意欲を掻き立てているのではないだろうか。一方で、日本ではネット詐欺の横行や割高な送料などから、ネットショッピングを躊躇する声も聞くが、中国ではネットショッピングに対する抵抗感はないのだろうか。

≪まずは安心感≫
 日本ではよくネット詐欺の被害にあったという声を聞くが、それはネットショッピングの消費者先払いという不公平なシステムに由来するものが多いと考えられる。この問題に対して、中国では次の方法をとることで問題解決を図っている。まず商品を購入する際にネットショッピングモールに購入代金を預ける。その後商品を受領し品質に問題がないことを確認すると、ネットショッピングモールからお店にお金が振り込まれる。このシステムの良いところは、まず詐欺に会う可能性がないという点や入金に伴う煩わしさがないという点、代金引換などで生じる手数料が一切かからないという点だろうか。このシステムは代金引換システムによく似ているが、手数料が一切かからないという点が大きな違いだ。一度でもネットショッピングを経験したことがある人ならば、このシステムのすばらしさがお分かりいただけるのではないだろうか。

≪送料は安いが≫
 ネットショッピングを利用する際、商品の代金と同じくらい気になるのが送料だ。特に日本の送料は高い。ましてやこれだけ広い中国である。送料はすごく高いと思われるだろう。しかし、中国の送料は信じられないほど安い。ネットで商品を購入した場合、送料は全国一律10元(約150円)と格安だ。この送料の安さもネットショッピングを活性化させている大きな要因だろう。しかし、値段に比例してサービスの質も落ちる点は非常に残念である。業者間でもサービスの質は大きく異なり、一律的なサービスは期待できない。なかには指定した場所に商品が届かない事や配達員により商品が盗まれるといった事もある。筆者もこのような経験があり、サービスの悪さを強く感じるが、安いので仕方がないと諦めざるを得ない。まだ中国ではサービスの質や安心感はお金を出して手に入れる物なのだろう。

 このように中国のネットショッピング市場の成長には上述した理由だけでなく、いろいろな要因が作用していると思われるが、ネットショッピングの利用率が近年減少傾向にある日本において、利用率増加につながるヒントが隠されているのではないか。ネットショッピングをうまく活用すれば、新規客の掘り起こしや事業販路の開拓も容易になる。ネットショッピングをより活性化させていくためにも、中国のシステムに見習うべき点も多くあるのではないだろうか。

「中国の就職事情について」 2008年9月

 「大学を卒業すればいい仕事がある」そういう時代は終わった。「大卒」というブランドにかつての輝きはない。これが今日の中国の大学生の就職活動を形容する代名詞だ。中国社会科学院が発表した社会白書によると、2007年に大学を卒業した500万人近くのうち、就職しなかった人は120万人にのぼった。計画経済から市場経済への移行に伴い、大学生の就職活動に何が影響しているのだろうか。

≪供給過剰となった就職市場≫
 1980年代から90年代初期、大学卒業者の仕事は基本的に学校が分配していた。そのため学生に就職できないという心配はなく、どこに分配されるかが大きな問題であった。しかし90年代以降になると、大学生に自ら就職口を探させる試みが始まった。一見すばらしい制度のように思われたが、大学がすぐに学生の募集を拡大したため、就職活動者の供給過剰という新たな問題を生みだした。01年に150万人だった大学卒業者は、08年には559万人にのぼる。中国の経済成長率は10%台の高い水準を維持しているものの、大学卒業者の増加スピードにはかなわない。このため、大学生の就職市場は、短い期間で深刻な供給過剰となった。もちろん、この供給過剰という現状は全体的なもので、個人の状況はそれぞれ異なる。一般的には、東部の有名大学の企業からの需要が多い分野を専攻している学生は就職に有利で、選択の幅も多い。また、女子学生の就職が決まるのは男子学生より遅く、同じ条件だと男子学生のほうが有利である。学生は職業選択の自由を与えられた一方で、就職難という新たな問題をたたきつけられた。

≪地域間のアンバランス≫
 学生の多くは卒業後、経済の発展している東部の沿海部で就職したいと考えている。まだ発展していない西部で働きたいと考える学生は少ない。というのも、大学生が就職活動で最も重視するのは、給与と昇進の可能性だからだ。この点に関しては間違いなく東部のほうが条件は整っている。計画経済の時代は、西部で働いても、環境が比較的厳しいだけで、給与にはそれほど差がなかった。しかし現在のように市場経済の時代は、東部と西部の発展が不均衡であるため、同等のポストでもその差は大きい。たとえば公務員の給料でも地域によって数倍もの違いがある。

 深刻な就職難が生じている東部だが、西部に行けば仕事はある。そのため国家は人材のアンバランスを防ぐため、様々な制度を整え学生の西部での就職を奨励している。国家助学金や国家奨学金、西部支援プロジェクトなどがその例だ。その内容は西部で就職した学生に様々な優遇条件をつけるというものだ。例えば、大学院に推薦する、大学院入試や公務員試験の際に点数をプラスするなどである。そのため契約期間が満了すると再び東部に戻って進学したり就職する学生も多いが、西部で就職する学生は確実に増加しており、これらの制度は一定の効果をあげている。

 なお、学生の就職先希望地は以下のとおりである。1位:北京、2位:上海、3位:広州、4位:深圳、5位:南京

≪専攻による就職事情の違い≫
 就職の際、専攻による違いも大きな壁として立ちはだかる。歴史や哲学、数学などの基礎的な学科を専攻している学生は、外国語や観光、会計などの実用性の高い学科を専攻している学生と比べると、その就職率は遠く及ばない。また、大学では理論を重視し実践に重きをおかない教育を行っているため、実践能力に欠け、企業の要求に応える事ができない。そのため企業は、大学卒業生の職業能力を養成するよりも、低コストで技能を持った専門学校の卒業生を雇うほうがよいと考えている。

≪存在する男女差別≫
 中国では1950年代から「女性が天の半分を支える」と言われるようになり、今の若い人たちは子供の頃から男女平等の教育を受けてきた。そのため、女子学生の多くは単純な事務仕事では満足せず、男性と同様に職場で活躍したいと考えている。しかし、彼女たちは近年就職活動の現場において、「男性に限る」や「男性優先」という現状に遭遇している。というのも現在の就職市場は供給過剰になっているため、雇用者側が求人の際に様々な条件を提示するようになり、これまで隠れていた性差別が表面化したためだ。今の女子学生たちは募集要項を見る時、まずは「男性に限る」という条件がないことを確認することが習慣となっているようだ。しかし、こうした差別的な条件に対し雇用者側を訴える人は少ないのが現状だ。

 様々な要因が介在する今日の就職氷河期だが、今後どのように乗り越えていくのだろうか。この問題は市場のメカニズムだけに頼っていては解決できない。政府の積極的な支援が必要なのではないだろうか。今、大学生の直面している就職難は中国の経済体制の転換に大きく関係している。変革の時代に身を起き、人々の意識も切り替えていく必要があるだろう。そして、このような変革こそ今日の中国社会の活力、原動力となっているのも事実である。

                  (人民中国08.5月号より一部抜粋)

「中国の旅行事情について」 2008年7月

≪中国の海外旅行事情≫

 中国の経済成長はGDPの5年連続2ケタ成長など一向に留まる所を知らず、世界有数の経済大国となりました。依然として沿海部と内陸部に大きな格差を抱えつつも、年収50万元(約800万円)以上の富裕層がすでに1億人を突破し、消費の傾向も物から旅行などのサービスに移りつつあると言われています。

 なかでも旅行市場は国内外合わせ延べ13億人が移動する巨大なマーケットへと成長し、その市場規模は非常に大きなものとなっています。海外旅行について言えば、相次ぐ海外旅行先解禁もあいまって海外に旅行する中国国民は増加の一途をたどり(年間平均増加率は22.7%)、07年は4,095万人の中国国民が海外旅行に出かけています。今では中国がアジア最大の観光客源国としてその地位を不動のものとしています。中国政府による海外旅行先解禁は1983年の香港を皮切りに07年末までに134カ所に広がり、海外旅行を取り扱う旅行会社は800社に上ります。以前の中国の海外旅行と言えば公費での旅行者数の占める割合が非常に高かったのですが、近年は私費での海外旅行者が公費を大きく上回っており(07年は85%が私費)、海外旅行自体の形態も大きく様変わりしてきています。

 中国国民の海外旅行先はなお周辺諸国や地域が中心で、07年はアジア諸国地域を訪れた国民は海外旅行者全体の約9割を占めています。香港やマカオがその中心で日本や韓国、タイ、シンガポールなども人気の高い国となっています。アジア以外ではフランスやオーストラリアなども人気の高い国です。また今年の6月にはアメリカへの団体旅行が試験的に開始されたため、今後アメリカへの旅行者も増加すると思われます。

≪日本への旅行≫
 日本への旅行においては00年から試験的に開始され、05年に正式解禁されました。日本を訪れる観光客は年々増加し07年は約95万人の中国国民が日本を訪れています。今やアメリカを抜き韓国、台湾に続く3番目の受入国へとなっています。また、今年の3月には日本政府は更なる旅行客増加を考慮し、2〜3人の家族旅行についてもビザの発給に踏み切りました。以前は5〜40人までの団体旅行のみが対象だったことを考えると、中国の旅行も多様化してきたことがうかがえます。この制度が富裕層にどのくらい受け入れられるのか、今後の動向が気になるところです。

 中国国民にとって日本の有名な観光地と言えば、東京や大阪、京都、北海道などが挙げられますが、各出発都市によっても旅行コースは若干異なるようです。青島からの旅行団を例にとると、コースは大きく分けて飛行機を利用するコースとフェリーを利用するコースの2種類があります。飛行機を利用するコースだと、東京・大阪を5泊6日で周遊し、費用は約13万円の商品が多いようです。また、フェリーを利用するコースだと下関から九州を6泊7日で周遊し、費用は約8万円です。

≪中国国民の旅行観≫
 では、中国国民が旅行先を選ぶ際、何を基準に選択しているのでしょうか。07年に発表されたニールセン社の中国海外旅行観測報告書によると、中国国民が旅行先を選ぶ際に4つの要因を重要視すると言っています。それはコスト(61%)と食事(58%)、安全面(57%)、自然景観(52%)の4つです。このデータからもわかるように中国国民は非常に食事を大切にする国民です。食文化の違いを全面的に出した観光誘致も面白いかもしれません。また、日本ではよく観光地となる神社仏閣も中国国民にとってはあまり興味の対象とはならないようです。というのも中国には日本より優れた歴史ある仏閣が数多く存在するから、というわけです。

 一番大きなコストの問題ですが、前述報告書によると中国国民が1回の旅行で使う平均費用は北方地域で約28万円、南方地方で約38万円だそうです。しかし、これだけの購買力があるにも関わらず、中国国外への外貨持出し限度額はわずか2万元(約32万円)です。平均消費額からも分かるように、お金さえ持ち出せれば消費はより促進されるものと思われます。

 そこで今脚光を浴びているのが中国の銀聯カードです。銀聯カードとは日本のデビットカードに相当するもので、支払い時に現金の代わりに使う事で、預金口座から直接代金が引き落とされる仕組みになっています。

 銀聯カードにはクレジットカードのような使用限度額もありません。その発行枚数は15億枚と言われ、旅行をする人であれば誰でも持っているカードです。

 日本では05年からこのサービスが始まり、今では全国約11,000店がすでに導入しています。わずらわしい両替等も必要なく、現金所持の不安も解消されることから、旅行者にたいへん好評を得ています。九州でもすでに1,000店以上が本サービスを導入しており、今後さらに増えるものと考えられます。銀聯カードは中国の旅行者を呼び込む上で大きな武器となっているのです。

 これ以外にも旅行会社に1人当たり40〜50万円の保証金を支払う必要があります。この保証金は失踪防止のためであり、帰国後返金されるものではありますが、青島市民の平均月収が3万円ほどであることを考えると、一般市民にとってこれだけの大金を用意することは至難の業と言わざるを得ないでしょう。ちなみにこの保証金は旅行会社が旅行者に対して課するものであり、法律的な決まりはないようです。しかし保証金を課さない場合、確実に訪問国で逃げる人が出てくるため、やむを得ない措置ということです。この保証金という足かせがなくなれば、より多くの中国国民が海外旅行に行けるようになると思うのですが、これも中国の抱える格差問題の1つの現れかもしれません。

≪銀聯カードの導入がカギ?≫
 今年は四川大地震の発生や、祝祭日の改定が行われ年に2回あった大型連休がなくなるなど、海外旅行にとってマイナス面の動向が目立ちましたが、それでもなお中国国民の旅行欲は衰えないものと思われます。隣国中国からの旅行客をいかに取り込むかが、これからの観光産業振興のカギとなることでしょう。下関市を訪れる中国からの旅行者は年々増えていますし、銀聯カードの導入など今後対中国に特化した観光誘致政策をとっていくのも1つの選択肢ではないでしょうか。

「オリンピックへ向けて」 2007年12月

 北京オリンピックの開幕まであと250日を切り、開幕に向けた準備が急速に進められています。オリンピック開催中は世界中から多くの観戦客が中国を訪れることが予想されるため、公共機関などのハード面の整備だけでなく、ルール意識やサービス精神、マナーの向上などソフト面での受け入れ準備も進められているところです。今大会は環境に配慮したオリンピックすなわちクリーンオリンピックの開催がテーマに掲げられ、北京を除く唯一の開催都市として、青島では様々な取組が行われています。その中でも特に力を入れているテーマの一つに、公共交通機関の充実が挙げられます。

 しかし、元来中国ではルール意識やマナーなどに関する教育はほとんどされてきていないため、急激な経済の発展に追い付いていないのが現状です。そのため、1500億円もの国家予算を投じ、ルール意識やマナーの向上に関する国家プロジェクトが立ち上げられました。ここでそのプロジェクトのいくつかを紹介していこうと思います。

 まず、国民の意識改革を行うため、主にテレビなどの電子媒体を利用して、ルール意識やマナーの向上に関する啓蒙活動が行われています。これらの啓蒙は「拍手しよう」編や「並ぼう」編、「笑顔で迎えよう」編などそれぞれテーマごとに製作され、テレビや駅、空港、バス、市内の電子掲示板などあらゆる場所で放送されています。飛行機の中でさえこの手の啓蒙CMは放送され、靴を脱いで他人に迷惑をかけない、化粧室に落書きをしたり壊したりしない、人の席に座らないなどマナーの向上を訴えています。  

 また、タクシー内には歯を磨こう、風呂に入ろう、異臭を漂わせない、車で寝泊まりしないなどと記載されたステッカーが貼られ、ドライバーへの意識改革が行われています。そのため、口からニンニクの臭いを漂わせたり、体臭のきつい運転手もすべて「車内の異臭」として取り締まりの対象となります。

 これらの啓蒙活動を実践的に普及していくキャンペーンの一つに「並ぼうデー」があります。このキャンペーンは駅や商業施設、競技場、学校などで、人々が自主的に列に並ぶことを促進するもので、毎月1度行われています。マナーのいい人には景品も進呈されます。日本では当たり前のマナーだと思われる方も多いかもしれませんが、中国ではバスや列車への乗車時やチケットの窓口販売などで列に並ばない人が多いため、このようなキャンペーンが大々的に行われているのです。

 これらの啓蒙活動の成果か、バスでお年寄りや体の不自由な方へ席を譲る行為をよく目にするようになりました。少しずつでありますが、思いやりの心や譲り合いの精神が根付いてきているのではないでしょうか。オリンピック効果が経済のみならず、マナーの向上をもたらし、笑顔でオリンピックを迎えられることを祈るばかりです。

 

「青島市の交通事情について」 2007年9月

 2008年は北京オリンピック開催年です。今大会は環境に配慮したオリンピックすなわちクリーンオリンピックの開催がテーマに掲げられ、北京を除く唯一の開催都市として、青島では様々な取組が行われています。その中でも特に力を入れているテーマの一つに、公共交通機関の充実が挙げられます。

 中国の交通手段と聞けば自転車を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、ここ青島においては自転車での走行を見かけることはほとんどありません。なぜなら、青島は非常に起伏の多い地形に位置するため、自転車での走行に不向きな土地柄なのです。そのため、自転車の代わりに市民の足として広く利用されてきたのがバスです。青島のバス網は市内隅々まで行き届いており、非常に便利です。しかし、マイカーの激増により市内の主要道は常に渋滞してして、バスの運行に支障をきたしている状況です。主要公共機関であるバスの遅れは、オリンピック開催に大きな影響を及ぼす恐れがあるため、コンピュータによるバスの中央制御システムの構築が進められています。

 このシステムでは、運転席に設置されたコンピュータにより中央制御室との連絡が常時可能であり、バスに異常がある際は自動的に警察への通報が行われ、交通事故においては1分以内に中央制御室へ連絡が入るようになっています。また、搭載されたGPSにより運行状況が逐次把握できるようになっており、中央制御室の管理により途切れることなくバスを運行することが可能になりました。しかし、システムを効率よく稼働させるためには、すべてのバスへの配備が課題とされており、年内にすべてのバスへの配備が完了する予定です。また、このシステムは超過速度等の交通違反も管理できるため、正常運行ばかりでなくバスの安全走行にも大きく寄与し、交通事故は導入前の50パーセント近くまで減少するなど大きな成果を上げています。

 IT化は車体のみならず、ICカードによる料金システムの導入や、停留所への電子掲示板の配置など広く進められ、得られた情報は一層のサービス向上に役立てられています。ちなみに現在停留所にはバスの時刻表は存在せず、始発と終発の時間のみ記載されています。時間に細かい筆者としては一刻も早い電子掲示板の設置を願う所です。

 公共交通機関を充実させる一方で、クリーンオリンピックの精神に基づきマイカーの利用を抑制する取り組みも同時に行われています。9月17日からの1週間を“バスウィーク”と定め、すべての公務員が公共交通機関を利用して出勤したり、9月22日を“ノーカーデー”と定め、走行禁止エリアを設けるなど広く市民にマイカー利用の自粛を促しているところです。なかには徒歩での移動を推奨するため、みんなでジョギングを行おうという取り組みもあります。

 これらの取り組みが実を結び、友好都市青島で開催されるオリンピックが盛大に成功をすることを祈るところです。

「世界の友と語り合うために−青島国際ビール祭り」 2007年6月

 中国には、「友と酒を飲めば、海の量ほど飲んでも酔うことはない」という言葉があります。大好きな友人と語り合う時間を特に大切にする中国ならではの表現です。そして、「地域を、国境を越えて、さらに多くの友と語り合いたい」、そうした人々の願いから始まったイベントが、この「青島国際ビール祭」です。

 このイベントは、青島ビールの発祥地であるここ青島に、世界数十社のビールメーカーが一同に介して行われる青島最大のイベントです。

 青島は、近年中国内外からの観光客が急激に増加した街として知られ、2006年の国内外観光客数は2,886万人、市の観光総収入は約5,632億円でした。そのなかで、海外からの観光収入は約597億円にのぼります。

 こうした国際観光都市となった背景には、大規模な商業PRイベントの成功が挙げられます。その代表的なものがこの「青島国際ビール祭」です。   

 青島ビールは、約100年前にこの地を占領していたドイツの醸造技術と、市近郊の湧き水から生まれました。会場では、その日製造された樽生が用意され、日本で飲まれている青島ビールと比較にならないまろやかな味を体験できます。また、会場に用意された数十種類の世界各国のビールも、そのほとんどが樽生で用意されており、ビール好きにはこたえられないイベントです。 

 1991年以来、毎年8月中旬から約2週間にわたって行われ、期間中は、青島各地でオーケストラによるコンサート、ビールカーニバルパレード、花火大会などが催され、大勢の市民や観光客で賑うほか、旧市役所・新市役所・五四広場など市内各地が美しくライトアップされます。

 青島ビール祭りでは、早飲み競争、海量競争(どれだけ飲めるかを競うもの。中国では、酒豪を「海量」と呼んでいます。)などおなじみの(?)イベントも数多く行われ、会場をうめる国内外からのお客さんが、文字通り「海の量」ほどビールを飲み、言葉が通じないながらも、いっしょに楽しむ風景が随所に見られます。   

 「青島国際ビール祭」は、8月11日(土)〜26日(日)に行われます。日中両国では、日中国交正常化35周年を迎える本年を「日中文化・スポーツ交流年」と定めており、ここ青島でも「国をあげて、日本の友人の皆様のお越しを心より歓迎したい」という雰囲気を強く感じることができます。

 皆さん、日本の暑い夏を少し忘れて、青島国際ビール祭で世界の樽生ビールを片手に、世界の友人たちと語り合ってみませんか?

「下関平家踊り保存会青島公演レポート」 2007年1月

 10月14日(土)から15日(日)にかけて、下関平家踊り保存会の皆様が下関市の友好都市である中華人民共和国山東省青島市を訪問されました。

 この時期青島市では、「青島−日本友好交流周(ジャパンウィーク)が開催され、その主催者である青島市対外友好協会、青島日本人会から同保存会が招聘を受け、このたびの訪問となったものです。日本文化の紹介を通じて、青島の皆様との交流をさらに深めたい、という日本人会からの要請に、保存会の皆さんが各々お忙しい中時間を割いて青島にお越しいただき、日本周開幕晩餐会メインイベント、そして、青島日本人学校での文化紹介授業の2度の公演を行ってくださいました。

 晩餐会当日の14日は、その日の16時に青島港に着き、19時には踊り披露という大変タイトなスケジュールでした。リハーサルの時間もない状態でしたが、さすがに海外公演も多くこなされている皆さん方。手早く準備をされ、すばらしい公演をしてくださいました。   

 青島ではこうした本格的な日本の伝統文化を目にする機会はほとんどなく、晩餐会では、来場した参加者の皆さんは勇壮な太鼓、小気味よい三味線の響き、迫力ある囃しを耳にして圧倒されていました。腕を肩から下に下げない「糸繰り式」という独特の腕さばきをまねようと、会場の子供さんが飛び入りで踊りに参加する思わぬハプニングもあり、会場から笑みがこぼれていました。

 開幕晩餐会の大成功から一夜明けて翌15日。この日は、青島日本人学校の児童に踊りの披露と指導をしていただきました。

 授業1時間前に学校に到着し、保存会の皆さんは一息つく間もなく、早速大太鼓やのぼりといった大道具の準備です。しかし、初めての公演場所でありながら、皆さんはてきぱきと準備をすすめていきます。

 「児童の皆さんが踊りをよく見れるように、太陽を背にして座ってもらいましょう。」こうした細かな気配りをしてくださるのも、皆さんの経験のなせるわざと感心しました。

 3時間目の文化紹介授業が始まると、参加した小学生55名は、勇壮な太鼓や囃しに子供たちはちょっとびっくりした様子。しかし、興味深げにじっと踊りを見ています。公演のあとの楽器体験、踊り指導では、子供たちがわれ先にと集まる中、一人ひとりに丁寧に、そして熱心に指導してくださった皆さんのおかげで、とても和やかで楽しい交流授業となりました。

 「難しかったけど、とても楽しかった。遠いところからわざわざ来てくださって、本当にありがとうございました。」という児童たちの言葉に、暑い中での指導公演、重い機材の運搬の大変さを忘れたかのような、保存会の皆さん方のすてきな笑顔がとても印象的でした。

 保存会の皆さん、本当にお疲れ様でした。

「下関市小学生海外派遣研修レポート」 2006年10月

 2006年8月23日〜8月26日まで、下関市の小学生9名が下関市の姉妹都市である中国青島市を訪問しました。今回はその模様を報告します。

 この研修は単なる観光旅行ではなく、下関市の小学生を代表して青島市人民政府、青島日本人会、山口銀行青島市分行の表敬訪問をはじめ、現地小学校との交流会などを通じ、国際感覚を身に付けた次世代の人材育成を目的としています。では、その研修の一部を少しご紹介しましょう。

 8月23日に飛行機で青島入り。青島市に盛大に歓迎していただきました。

 翌24日、青島市人民政府(現地の市役所にあたります)表敬訪問。市政府の副書記さんと対面し、生徒たちは緊張の連続。それでも一人一人が事前に練習していた中国語での自己紹介を立派に披露。これには副書記も驚かれ、「いつ勉強したのですか、中国語は難しいですか?」と、しきりに質問していらっしゃいました。

 そして、彼らが一番楽しみにしていたのが、同世代の小学生との交流授業でした。青島の上清路小学校と青島日本人学校の訪問です。

 上清路小学校は通常の科目履修だけでなく、ダンス、歌、スポーツなど幅広い分野で特に力を入れている学校です。私たちの訪問時にもダンスの披露があり、大人顔負けの迫力ある演技に「とても小学生とは思えない。」と生徒たちはびっくりしていました。

 そして、翌25日は、青島日本人学校の訪問です。小学部、中学部あわせて62名のこの小さな学校は、日本の文部科学省が認可した正式な日本の学校で、日本の教科書を使って勉強しています。生徒たちはこんな異国の地で同世代の日本人と会うのがよほどうれしかったらしく、中国切り絵の交流授業が終わっても子供たちの会話と笑い声が教室いっぱいに響いていました。どちらの学校でも下関の小学生がお礼に「よさこいソーラン節」の踊りと「さくらさくら」の合唱、合奏を披露しました。彼らは市内各所の小学校であるため、みんなが集まって練習する時間を作るのは難しかったのですが、少ない時間で皆一生懸命に練習しました。結果、どの小学校でも大変な拍手と喝采を受けました。どの子の顔にも一つのことを成し遂げたという満足感に満ちあふれていました。

 その後、市内各所の史跡を観光し、彼らの初めての海外研修はこうして幕を閉じました。

 今回の訪問が成功したのは、青島市政府の協力をはじめ、青島日本人会、そして地元下関市の企業で山口銀行様のお心遣いあってのことでした。訪問の打診の際にも快く応じてくださり、小学生たちも「青島に日本と同じような銀行や会社があり、外国でも日本の人々が一生懸命に働いている。」という、ごく当たり前のことに新鮮な驚きと感動を覚えていたようでした。

 最後に、「もう1週間は青島にいたい。」と彼らがもらした感想を聞き、この研修が彼らの今後の人生にきっといい影響を与えるだろう、と確信して今回の報告を終えたいと思います。

「おじいさんと鳥かご」 2006年7月

 2005年9月より、山東省青島市に駐在し、青島市人民政府外事弁公室にて勤務しております。素人の書く記事ではありますが、中国特に青島の経済、文化、生活事情の現状を知っていただき、少しでも中国を身近に感じていただければ幸いです。

 青島の朝は多くの野鳥の声で始まります。鳥の種類やその泣き声には疎い私ですが、こちらに来た当初、多くの鳥の鳴き声にとても驚いたものです。しかし、その鳴き声のすべてが野鳥ではなく、実はお年寄りが飼っているものも多いと知ったのは、こちらに来て1ヶ月ほどたってのことです。

 朝5時30分。街のおじいさんたちが、手作りの布をかけた大きな鳥かごを手に、近くの公園へと集まって来ます。皆が集まったところで一斉に布を取ると、鳥たちは待ち望んでいたかのように、思い思いに鳴き始めます。おじいさんたちは「わしの鳥が一番いい声で鳴くだろう。」と飼い鳥の鳴き声を競うのです。この鳥で主なものは「コウテンシ」というヒバリの仲間で、いろいろな鳥の鳴き声をまねる事から中国では「百霊」と呼ばれています。かごの中の水飲み場とえさ場は陶器でできていて、青、赤で描かれた独特の文様や、漢文の書かれたものなど飼い主のこだわりが見られます。かごは木に掛けられることが多く、またかごが目立たない色で統一されているため、遠くから見るとかごは木々と同化し、周りの風景と溶け込んでいるような印象を受けます。かごが公園の風景を損なうことなく、うまく自然と調和しているのです。そして、「最近は暖かくなったな。」「昨日孫が遊びに来て、数字の数え方を教えたんだよ。」と会話を楽しむのがおじいさんたちの日課です。九官鳥のかごの前では小学生は決まって「ニーハオ」と声をかけ、周囲の人々の笑いを誘っています。鳥のさえずりと共にお年寄りたちが子供たちの通学路を守り、彼らの成長を見守っているという印象を強く受けました。

 近年の中国は都市化により、以前のような大家族での生活が少なくなりました。「かわいくさえずる鳥たちは、朝を告げると同時に、わしの大切な家族なんだ。我が子や孫を思いださせる。」あるお年寄りが核家族化の進む中国の現状を話して下さいました。しかし、むしろ私には彼らが鳥を飼うのは、本来中国の人々が特に「外の空気を吸って運動する」ことが好きなことに由来することにあると思っています。毎朝お年寄りたちは公園での友人や、そして私のような異国人との会話を心から楽しみ、その時間をとても大切にしてくれています。

 中国を旅行される際には、ぜひ旅行地の早朝の公園を訪れてみてください。人々の穏やかな人柄と心なごます鳥の鳴き声に接することで、旅行の合間にゆっくりとした時間の流れを感じていただけるはずです。


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