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みどころ

 2021年に没後90年を迎える画家・高島北海にちなみ、自然に魅了され、その秘密を探求した芸術家や研究者たちの創作活動に迫る展覧会です。

 下関ともゆかりの深い高島北海は、前半生に地質や森林を専門とする技術官僚としても活躍した、異色の経歴の持ち主です。自然科学の知識と、国内外各地を巡った経験が生んだ北海の作品を、代表作を含め約30点ご紹介いたします。 さらに、北海以外の芸術家や研究者たちによる自然の表現にも注目します。「山・渓流/植物/身近な自然・海」を切り口に、絵画、写真、工芸美術など90点余りを展観します。

(会期中、展示替えがあります〔前期:令和3年(2021)年2月21日(日)まで/後期:2月23日(火・祝)からを予定〕)



山・渓流 ~画家たちは自然の中へ~

 高島北海は20代の前半、生野鉱山で地質学の基礎を学び、その後も日本や世界各地を巡り歩く中で、それぞれの地質が生み出す風景の特徴を、スケッチや水彩画に描きました。写生に基づく制作は、独自の山水画の世界に結実していきます。日本最初期の水彩画として知られる《富士登山図》(1878年)、《日本亜伯槍ヶ岳図》(1911年、展示は前期のみ)、《長門峡金郷渓口切籠峰》(1922年)などで、たっぷり紹介します。
 本格的な登山家としても知られる吉田博や山元春挙らの山や渓流の描写、近世の文人画家田能村竹田が下関滞在中に描いた真景図や、北米大陸の雄大な自然をとらえたアンセル・アダムスの写真作品も必見です。


植物 ~観察され、研究される自然~

 ここでは絵画、学術資料、工芸という異なる要素を踏まえたラインナップにより、植物をモチーフとした表現をたどります。《果蔬図》(日本画)、《植物細密図》(学術資料)などの北海作品は、植物への深い理解と関心、また画家としての幅広い表現がみどころです。
 画家たちの徹底した観察に基づく絵画作品、植物学者の牧野富太郎が自ら手掛けた植物図、杏橋忠次郎(初代下関市農業試験場長)の一連の植物観察図、ドイツの写真家ブロスフェルトによる植物の写真、ジャポニスムを背景に国際的な注目を集めた二代川島甚兵衞の織物と、その原画を手掛けた日本画家たちの仕事など、植物を巡る多様な表現を紹介します。 


身近な自然・海 ~自然の永続性 過去・現在・未来~

 近代に入り、画家たちはどこにでもあるありふれた風景に目を留め、描き始めます。人の暮らしに寄り添う身近な自然、水辺の風景、海を描写した作品を中心に紹介します。 
 かつてない環境の激変に直面し、確かな指針を見失う今、改めて本質的なもの、本当に価値あるものが問われています。芸術を仲立ちに、自然との関わりを見つめ直してみませんか。

〈高島北海以外の主な出品作家〉
浅井忠、五百城文哉、石井柏亭、G.D.エーレト、大下藤次郎、小野竹喬、堅山南風、川合玉堂、菊池芳文、杏橋忠次郎、小林和作、杉本博司、髙島野十郎、高橋由一、谷口香嶠、田能村竹田、東松照明、西山翠嶂、菱田春草、福田平八郎、二口善雄、牧野富太郎、森寛斎、山元春挙、吉田博、ヤン・ヨンリァン ほか

高島北海 (たかしま ほっかい、1850-1931)

 長門国萩(現在の山口県萩市)の医師の家に生まれる(本名得三)。農商務省などで技術官僚として勤務した後、画家に転身し、東京と下関を拠点に活動した。 画家としては独学で、山水画や花鳥画を多く手掛け、明治~昭和初期の日本画壇の重鎮として活躍した。1880年代後半のフランス留学は森林学を学ぶためであったが、アール・ヌーヴォー前夜におけるエミール・ガレらナンシー派の美術家たちとの交流も注目されている。晩年は作画に加え、長門峡など山口県内の名勝開発にも尽力した。

〈出品予定作品から〉

 展示作品リスト

展示作品リストをこちらからご覧いただけます。(PDF218KB)

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 ブックレット

価格:800円(税込み)
規格:25.6cm×18.2cm(B5判)、48頁

内容:
  • ごあいさつ
  • 作品図版
  • コラム1「二代川島甚兵衞の織物にみる、明治期の工芸の海外展開」
  • コラム2「水族館スタッフから見た《魚介下図》」
  • エッセイ1「エーレトと高島北海の『植物細密図』」
  • エッセイ2「高島北海が魅せられた長門峡の地形と地質」
  • エッセイ3「高島北海が山水画に追求したもの―本画と制作資料の比較から―」




展覧会リーフレットをこちらからご覧いただけます。(PDF1.2MB)
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