みどころ

  •  ビアズリーによる作品・資料 約25点(会期中、一部展示替えあり)
  •  作品件数 約200点 、総展示数約300点
1章 ビアズリーとその周辺
 弱冠22歳のビアズリーが挿絵を手掛けたオスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』。官能性と死のテーマが織りなすイメージは、テキストと等価な絵画世界が展開する画期的なもので、発表されるや大評判となりました。ビアズリーが美術主任を務めた文芸美術雑誌『イエロー・ブック』は、都会的で挑発的なイメージで、大衆的人気を獲得しました。彼の過激でセンセーショナルな作風は、熱狂的な支持と同時に、強い批判も巻き起こしました。あふれる才能に洗練を加えつつあった1898年、ビアズリーは結核の悪化により、わずか25歳で夭逝します。彼の短くも鮮烈な創作活動を、『サロメ』全17葉を軸に、雑誌や書籍資料により紹介します。ジャポニスムを牽引した浮世絵版画や、ビアズリーの才能をいち早く認めたラファエル前派の画家バーン=ジョーンズの装幀本、当時の挿絵入り絵本など、ビクトリア朝時代の美術の様相も紹介します。

2章 アールヌーヴォーへの波及
 曲線を多用した装飾的な様式で、ビアズリーとアールヌーヴォーの表現は軌を一にします。ミュシャに代表される優美な女性像と装飾性を融合させたアールヌーヴォー様式は、新しいメディアであるポスターを通して大いに普及しました。ビアズリーに早くから関心を寄せていたトゥールーズ=ロートレック、アメリカのブラッドリーのポスターなども展示し、19~20世紀美術の、華やかさの背後に潜む神秘性や象徴性を紹介します。
 世紀末芸術が好んだ女性像に、「ファム・ファタル(運命の女)」があります。男性を破滅させる魔性の女のイメージで、サロメはまさにその典型と言えます。一方で現実の社会では、仕事を持ち、同伴者なしに出歩く「進歩的な」女性たちが登場しました例えばビアズリーが『イエロー・ブック』で描いたパーティーに興じる女たちなどは、「新しい女」の典型に見えます。このような女性をめぐる多義的なイメージを投影した作品を展示します。
3章 日本の画家たち
 西洋美術の受容期に、日本の美術家たちがビアズリーをはじめとする世紀末美術から受けたインパクトも見逃せません。藤島武二、青木繁のアールヌーヴォー様式、橋口五葉の装幀デザイン、竹久夢二の抒情的で洗練された創作を紹介します。さらに文芸・美術雑誌『明星』や『方寸』、『白樺』『月映』に関わる画家たちの作品・資料から、日本の近代美術がビアズリーから受け継いだものに迫ります。
  • 作品画像:
    オーブリー・ビアズリー『サロメ』挿絵より《ダンサーへの報酬》1894年 熊本県立美術館蔵、オーブリー・ビアズリー『イエロー・ブック』第1号表紙 1894年、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《ディヴァン・ジャポネ》1892年、アルフォンス・ミュシャ《ジョブ》1898年、橋口五葉ら《はがき絵「花の香をかぐ女」》1905年頃 鹿児島市立美術館蔵
    (所蔵元表記なしは、下関市立美術館蔵)
  • 出品作品リスト(PDF538KB)